精華町における放射線量など
福島第一原発事故後、身近な生活空間における放射線量に対する国民的関心が高まっている状況を受け、本町では、独自に放射線量測定調査を実施する必要性などについて検討するとともに、当面の住民の不安を解消するため、専門家の指導助言を得ながら、職員による放射線量測定実習及び試験測定を実施しました。
1.放射線量測定の現状
現在、京都府により、福井県高浜発電所付近において6箇所の放射線測定所及び7箇所の可搬型ポスト設置所、また京都市内に1箇所の放射線測定所、さらに学研都市区域の木津川市に1箇所の可搬型ポスト設置所、合計15箇所において、常時、放射線量の測定が実施されており、測定結果についても平常時の水準であることから、町としては、現時点において問題はないものと考えています。 しかしながら、特に子どもへの影響が懸念される地表面付近での測定は近隣市町村においても実施されておらず、住民の不安解消には不十分であるのが実情でした。
2.町独自の放射線量測定実施について
こうしたことから、本町においては、専門家の指導助言を得ながら、
・放射線に関する基礎知識を習得するための職員研修の実施
・放射線量測定の実地演習及び試験測定の実施
・各種測定機器の特性等を考慮した測定結果の分析 などに取り組み、その結果をふまえて、今後の放射線量測定調査の実施の必要性などについて検討を進めてきました。
3.放射線量の試験測定について
(1)測定日時 平成23年8月31日(水曜日)午後1時から5時
(2)測定場所 5つの町立小学校の校庭グラウンド中心部
(考え方)
子どもへの影響が最も懸念される義務教育施設であるとともに、東京都全域で実施された際に用いられた4km四方での地域区分方式を応用した場合、小学校を測定地点とすることで可住区域のほぼ全域をカバーできると考えています。
(3)測定項目 空間線量率(μSv /時、1cm線量当量率)
土の地表面5センチメートルと1メートルの地点 時定数は30秒とし、5回繰り返し測定による平均
(考え方)
吸収線量(1kgの物質に1ジュールの放射エネルギーが吸収されたときの吸収線量を1Gy とする単位)に対して法令で定められた係数を乗じ換算された数値の一つである線量当量(Sv )を単位として用いることで、他の機関が実施した調査結果との比較ができると考えています。 なお、今回の測定に用いた機器においては、特に1cm線量当量率(体内皮膚下1cmの深さでの被曝線量に換算された数値)を(μSv /時を単位として計数しています。
(4)測定機器 シンチレーション式サーベイメーターTCS-172B
(考え方)
この機器はγ 線による個人の外部被曝を管理する目的のものであり、1cm線量当量率は安全側に立って評価するよう換算・調整されています。このため、その線量率は吸収線量率並びに実効線量率より常に少し高めの数値を示します。
なお、実際に使用した測定機器については、信頼性を確保するため、校正されたものを用いています。 また、本機の線量当量率に対する機器仕様上の誤差が±15パーセントであることも考慮する必要があると考えています。
(5)そのほか
・敷地内の測定地点による線量の傾向を把握するため、山田荘小学校においては複数地点の測定を実施。念のため、一部土壌採取(精華台小学校及び山田荘小学校)も行い、核種分析を指導教授に依頼。
4.試験測定の結果について
(1)測定結果
測定場所 | 測定日 | 測定時刻 | 天候 | 地表5cm | 地表1m |
精北小学校 | 8月31日 | 14時10分 | 晴れ | 0.09 | 0.07 |
川西小学校 | 8月31日 | 14時40分 | 晴れ | 0.07 | 0.07 |
精華台小学校 | 8月31日 | 15時 | 晴れ | 0.09 | 0.07 |
東光小学校 | 8月31日 | 15時29分 | 晴れ | 0.08 | 0.07 |
山田荘小学校 | 8月31日 | 15時52分 | 晴れ | 0.09 | 0.08 |
(2)専門家の意見京都女子大学教授 水野義之(専門 素粒子物理学、核物理学)
今回の試験測定は、事前に放射線の基礎知識講習並びに放射線量計測実習を経た職員が、個々の計数結果の解釈についての理解を踏まえながら実施されたものです。 測定の結果、すべての計数値は理論的に想定される範囲内であることが確認されました。 これら一連の測定作業の前後では、セシウム137のγ線標準線源を使ってキャリブレーション(計数チェック)を行っており、測定作業中の機器の放射線検出効率が機器固有の誤差範囲内で一定であることも確認しています。 これらの計数値を日本地質学会による自然放射線空間線量率の理論的計算結果(精華町付近ではGy/時を単位とする吸収線量率で0.0543~0.0725μGy/時の範囲内となっている)と比較対照した結果、今回の計測値については、吸収線量率の値より高めの数値となる空間線量率(Sv/時)を単位したことを加味した上で、想定範囲内すなわち平常時の範囲内であると認められます。 あわせて、町内の二つの小学校(精華台小学校及び山田荘小学校)で土壌を採取して持ち帰り、これらをGe(Li)型γ線スペクトロメータで核種分析を行っています。 今回の空間放射線量計測においては、理論的に想定されうる環境放射線の主成分は岩石や土壌中の天然カリウム40によるγ線のみであると仮定して計数結果を解釈していましたが、実際に採取した土壌の核種分析の結果でも、同カリウム40のγ線が主成分であったことを実験的に高精度で確認することかできました。 なお、同スペクトル分析の結果から、セシウム137及びセシウム134のいずれも測定誤差(±3パーセント)範囲内で不検出という結果でした。 以上のように、今回、精華町で行われた放射線量測定の結果は、何重ものチェックに加えて、結果の解釈とデータ整合性の確認作業を経て、適切な方法で得られたものであり、この意味で本測定結果については、信頼性が比較的高いデータの一つであると判断できると考えています。
5.今後の対応などについて
今回の放射線量測定実習により、町として、放射線量測定についての手法など必要なノウハウを習得できたことにより、今後、継続的な測定が必要となった場合でも、機器購入や調査委託などに際して、即座に対応を始めることができるようになったと考えています。 一方で、今回の試験測定の結果からは、いずれも平常時の範囲を超える放射線量は測定されませんでした。 ついては、今後も、京都府による放射線量測定の状況の推移を見ながら経過を観察することとします。

測定実習の様子

試験測定の様子
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更新日:2019年03月15日