令和3年産水稲生産においてトビイロウンカの被害を受けないために

トビイロウンカの飛来情報(令和3年6月2日京都府農林水産技術センター農林センター発表)

昨年、東海地方以西を中心に多発生し、府内では1,010ヘクタールで354トンの減収被害(注1)となったトビイロウンカですが、本年は梅雨入りが早く、早い時期から飛来に適した気象条件となっています。株元での増殖を見逃さないよう、ほ場での観察を行い、発生を認めた場合は適切に防除を行ってください。

(注1)令和2年産水稲の被害面積及び被害量:農水省統計

京都府に飛来した可能性がある日

気象データを用いて解析された大気の状態から、京都府に飛来をした可能性がある日(注2)は、5月5、17、18、20、21、28、29、30日です(6月1日現在)。

(注2)気象予報データによる飛来予測(JPP-NET)より

飛来状況

  1. 大阪府、奈良県、徳島県や静岡県などで昨年よりも早い時期から本虫の誘殺が確認されています。
  2. 6月1日現在、府内3箇所(京田辺市、亀岡市、京丹後市)の予察灯では、本虫の誘殺を認めていません。なお、令和2年は京田辺市、亀岡市、京丹後市いずれも8月上旬に誘殺を認めています。

今後の対応

本虫の発生を認めた場合は、出穂期の基幹防除時にトビイロウンカに効果が高い薬剤を選択してください。

トビイロウンカの生態及び観察のポイント

  1. 成虫の体長は3.5~5ミリメートル、光沢ある黄褐色ないし暗褐色の体色を呈します。

  2. 日本では越冬せず、梅雨の時期に大陸からの強い風(下層ジェット気流)に乗って日本に飛来します。

  3. 飛来虫がイネに産卵し、水田内の狭い範囲で世代交代を繰り返して増殖します。

  4. 成虫には長翅型(羽の長い型)と短翅型(羽の短い型)があり、ほ場に飛来する成虫はすべて長翅型で、その後の世代で増殖能力の高い短翅型が出現します。

  5. トビイロウンカは通常1ヶ月弱で世代を繰り返すため、急激に増殖し、坪枯れを生じさせることがあります。特に、収穫期が遅い中晩生品種(ヒノヒカリ、京の輝き、祝、新羽二重糯)では、被害が拡大することがあるので発生状況に注意してください。

  6. トビイロウンカは局所的に発生する傾向があるため、ほ場全体をよく観察し、発生に十分注意してください。特に株元に好んで寄生するので重点的に観察することが重要です。

  7. 水田内で、水が溜まりやすい、過繁茂で通風が悪い場所があるときは、そこに生息している可能性が高いので、特に注意して観察してください。

  8. 低湿田、通風不良田、多肥田等では発生しやすいので、特に注意が必要です。

トビイロウンカとは

  • 主に6月から7月の間に大陸から風にのって移動型(長翅型)成虫が日本列島に飛来
  • 飛来後のほ場では、定着型(短翅型)が現れ、急激に増殖
  • イネの株元を吸汗することで被害が発生し、ひどい場合は坪枯れを引き起こす
  • 気温が高く雨が少ない年には、発生が多くなる傾向がある

移動型(長翅型)

  • 体長約4.5ミリメートル
  • 翅が長い
  • 大陸から飛来

定着型(短翅型)

  • 体長約3ミリメートル
  • 翅が短い
  • 増殖スピードが速い

令和2年のトビイロウンカの発生と被害

例年より早いペースで飛来し、飛来量も多く、広い範囲で確認されました。さらに、夏の気温も高くトビイロウンカの増殖に適した気象条件であったため、株あたりの頭数も多く推移し、結果として東海以西の広い地域で被害(坪枯れ)が生じました。

令和2年の防除対策の課題

適期に防除ができなかった

例年発生が少ない地域では、早期防除を呼びかける発生予察情報が発表されても、坪枯れを確認してから防除を行うなど、適期に防除が行われず、被害が拡大したケースがありました。

効果の高い育苗箱施用剤が選択されなかった

トビイロウンカを対象としていない薬剤、又は、効果が低い薬剤を選択していたため、十分な防除効果が得られなかったケースがありました。

薬剤散布方法等が適切でなかった

本田防除において、薬剤の種類や散布方法によっては、トビイロウンカが寄生する株元まで薬剤が届かず、十分な防除効果が得られなかったケースがありました。

トビイロウンカの防除対策

地域の発生情報を集め、ほ場をよく観察しましょう

情報のチェック

都道府県の病害虫防除所が発表する発生予察情報などの病害虫の防除に関する情報をこまめに観察し、地域の発生状況を把握しましょう

ほ場の見回り

株元のトビイロウンカの増殖を見逃さないようにほ場をこまめに見回りましょう

 

・都道府県の病害虫防除所のホームページ一覧は以下のリンク先をご参照ください。

被害の発生が懸念される地域では次の対策をしっかり行いましょう

育苗期の防除

トビイロウンカに効果の高い薬剤を選択して箱施用剤を施用しましょう。

本田での防除(基幹防除)

多くの地域でいもち病やカメムシ等の防除と併せて出穂期前後に行われていますが、トビイロウンカに効果の高い薬剤による薬剤散布を実施しましょう。また、本田防除後も発生状況を確認するため、ほ場の観察を行いましょう。

追加防除

情報のチェックやほ場の見回りにより、トビイロウンカの発生状況に応じた臨機の防除を実施しましょう。出穂期以降に防除が必要な場合には、トビイロウンカの生息する株元まで薬剤が十分に届くように、使用する薬剤、散布機を選択しましょう。なお、株元への薬剤散布ができない場合には出穂前の粒剤散布を行いましょう。

留意点

地域や栽培体系などにより、使用する薬剤など、効果の高い防除体系は異なりますので、都道府県が発表する情報に基づき、トビイロウンカに対して、より効果の高い防除を実施してください。

おわりに

農林水産省が以下チラシを作成いたしましたので、ご参照ください。

この記事に関するお問い合わせ先

事業部 農政課 農業振興係・農地保全係
〒619-0285 京都府相楽郡精華町大字南稲八妻小字北尻70番地

電話番号:0774-95-1903
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更新日:2021年06月04日